十王図treasure
江戸時代の十王図が数ある中、慶長9年に描かれた栖足寺蔵の十王図は、伊豆最古と言われ全国的に見てもとても希少な作品です。裏書に記された、約百年に一度表具を修復した旨には地域の地名、名前が残ることからも長い間大切に受け継がれたことが伺えます。
十王とは人の死後どの世界へと生まれ変わるかを決定する十人の王で、秦広王、初江王、宋帝王、五官王、閻魔王、変成王、泰山王、平等王、都市王、五道転輪王といいます。栖足寺本は、すべての絵で画面上方に机を前にし椅子に座った王がおり両脇には冥官や童子、下方にかけて刑罰や地獄の様子が描かれています。本図で興味深いのは、十幅のうち四幅に、白い服と頭巾をかぶった二人づれの人物が書き込まれています。この人物たちは地獄で死者が裸同然で刑罰を受けている中、着物を着ており、あたかも地獄めぐりをしているように見えます。また、白い着物をよく見ると、細かな点が描き込まれており、おそらく経文が書かれた死装束を着ているのでしょう。この二人が何者かは不明ですが、生前に善行を行った者、もしくは追善がしっかりされている者だと推測されます。その他にも、遺族が四十九日までの間、地獄の苦しみを救済するために行う釘抜き念仏の様子や、おそらく死神であろう馬上で弓を引く姿など、他では見られない特質すべき様子が描かれています。
また、この様子は美術専門誌「國華」にも取り上げられ、研究者からも注目されています。
「毎年1月と8月に特別公開されます。詳しくはお問い合せください。」
三途の川・奪衣婆
着物が懸けてある樹(衣領樹)の下には、死者の着物を剥ぎ取る奪衣婆、背後には三途の川が流れ、悪人は毒龍に飲まれ、善人は地蔵菩薩に導かれ赤い欄干の橋を渡る。
●サイズ:縦88.0cm×横44.8cm
修羅道
武士たちが合戦をし、刀が黒雲から降る。黒雲には獄卒が武士たちを鼓舞する太鼓を叩く。全身に釘を打たれた者のそばには、皿に盛りあげられた餅が置かれる。四十九日の餅といわれるもの。
●サイズ:縦88.0cm×横44.6cm
畜生道
動物をいじめた者、また貪りの心を持つ者が堕ちる地獄。人間の頭に馬の体になった者が牛頭・馬頭獄卒に率いられている。
●サイズ:縦88.0cm×横44.5cm
餓鬼道
常に餓えて苦しい世界。食べ物や水を飲もうとしても、口にする直前で炎となって食べることが出来ない。また舌を拡げられて牛に耕される者が描かれる。
●サイズ:縦88.5cm×横44.6cm
閻魔王
十王のリーダー、閻魔王の法廷。浄玻璃の鏡には生前の行いがつぶさに映し出される。ここでは寺院に放火をし、盗みを働いている様子が描かれている。
●サイズ:縦88.0cm×横44.7cm
地蔵三尊
十王の本尊となる地蔵菩薩。本図では中央に地蔵菩薩、向って右の白い肌の童子が掌善童子、左の赤い肌の童子が掌悪童子。
●サイズ:縦88.0cm×横44.9cm
等活もしくは衆合地獄
等活地獄もしくは衆合地獄を描く。臼と杵で粉々にされたあと、箕で残骸をふるっている様子が描かれている。等活地獄の場合は、箕でふるわれたあと、元の姿となりまた同じ刑罰に遭う。
●サイズ:縦88.0cm×横44.7cm
業の秤・賽の河原
画面下には冷たい氷の地獄、そのすぐ上に地蔵菩薩が子供を救う賽の河原、すぐそばには竹林で泣いている女性が描かれる。竹林の女性たちは石女地獄に堕ちた者。その上には巨大な秤(業の秤)が置かれ、生前の罪の軽重により、傾きが変る。
●サイズ:縦89.0cm×横44.6cm
血の池地獄
赤い池に女性だけが堕ちている血の池地獄。池の真ん中から女性を救う如意輪観音が現れている。すぐ上には木の上の女性を見上げる男性の姿(刀葉林)。また二匹の蛇が巻き付いている両婦地獄が描かれる。
●サイズ:縦88.5cm×横44.6cm
針の山
針の山を獄卒に追われる死者。画面下方には白馬に乗った人物が、建物の中の人物に向かって矢を放つ。
●サイズ:縦88.8cm×横44.8cm
目連説話
重い石を背負わされて細い綱を渡る黒縄地獄。獄卒が真っ黒になった人物を棒で突き刺して差し出す先には、泣いて顔を伏せる僧侶の姿。目連救母説話を描いたもの。画面中央には火車を曳いて地獄にやってくる獄卒。
●サイズ:縦88.0cm×横44.5cm