河童の甕kappa's pot
むかし、栖足寺の裏を流れる河津川の淵に、河童がすんでいました。お寺の裏に位置するここは、大きく蛇行し深い淵をつくる裏門と呼ばれていました。
河童は水あびをしている子どもの足を引っぱるなど、いろいろないたずらをして村人をこまらせていました。そのうち、河童が子どもの尻子玉をぬくとか、生き肝を食らうなどと大げさにつたえられ、村人たちは河童をこわがるようになり、あげくのはてにはにくむようになりました。
ある夏の夕方、村人たちは寺の普請の手伝いをしたあと、裏の川で馬や道具を洗っていました。そのとき一頭の馬が急にいななき、うしろあしを高くけり上げました。そばにいた村人がおどろいて見ると、馬のしっぽになにか黒いものがしがみついていました。よく見ると、それはうわさに聞いていた河童でした。
「河童だ、河童がいるぞ」
だれかがさけぶと、近くにいた村人たちが集まってきました。河童も捕まってしまったら大変と大慌てで逃げ出し、裏門を抜けお寺の井戸にとびこみました。すると、村人たちはてんでに河童に石を投げつけました。河童はバラバラと落ちてくる石にがまんができず、井戸の中からはい出してきました。村人たちは河童をとりかこみ、
「こやつはひどいやつだ。ころしてしまえ」と、さけびながら、棒きれでたたき始めました。
ちょうどそこへ、栖足寺の和尚さんが帰ってきました。和尚さんは村人たちがさわいでいるのを見て、何ごとかと近づいていきました。そして、村人たちのあいだから中を見ると、河童が息もたえだえに倒れていました。それでもなお、村人たちは河童をたたいています。
和尚さんは大きな声で、
「皆の衆、やめられい」と、さけびました。
「今日は寺の普請の日じゃ。殺生は禁物じゃ。寺の縁起にかかわる。この河童はわしがあずかろう」といいました。
村人たちは、寺の縁起にかかわるのではしたかがないと、和尚さんの言葉にしたがって河童を和尚さんにあずけました。和尚さんは村人たちがいなくなると、
「これ河童、助けてやるからどこか遠くへ行きなさい」といって、河童をにがしてやりました。
その晩のこと、和尚さんは何者かが庫裏の戸をたたく音で目をさまし、縁側の雨戸をあけてみました。すると、月あかりの中に昼間の河童が立っていました。河童は、
「昼間は助けていただきありがとうございました。おかげさまで命びろいをしました。このつぼはお礼のしるしです」といって、丸い大きなつぼを縁側におきました。
「このつぼに河津川のせせらぎを封じ込めました。口に耳をあてると、水の流れる音がします。水の音が聞こえたら、わたしがどこかで生きていると思ってください。和尚さまもどうぞお元気で」といって、河童は立ち去りました。
和尚さんは、夢ごこちで聞いていましたが、われに返ると縁側に大きなつぼがあるので、たしかに河童が来たのだと思いました。
それからというもの、河津川に河童がすがたをあらわすことはなくなり、村人たちも、いつしか河童のことはわすれていきました。
けれども、和尚さんはときおりつぼの口に耳をあて、かすかな音を聞いて河童のぶじを思いました。また、河津川に出水があった際、このつぼがゴウゴウとうなりをあげ知らせ、人々が助かった事もあり。当時から寺の宝として大切に御奉りされてきました。
今でも耳をあてると、河津川のせせらぎが不思議と聞こえ、河童の無事を伺えます。人々は水の流れが心を洗うと言い、ありがたく拝聴していきます。
栖足寺裏手の清流には、馬のひづめのあとのついた石があったそうです。
河童とは?
河童とは日本古来の未確認生物で日本全国に伝説があります。
未確認生物のため、さまざまに表現されますが、描かれる多くの容姿は緑色の全身、頭の上にお皿があり、背中には亀のような甲羅、くちばしと言った特徴がうかがえます。愛くるしい容姿から人々に親しまれ、夫婦や家族円満に加え子宝の象徴とされ、水の神様としてお祀りされる場合もあります。この栖足寺では、約300年前に河童を助けた和尚さんがお礼にともらった瓶が残されており、瓶に耳をあてると川の流れる音が聞こえてきます。
ぜひ、この不思議な音を体験しにいらしてください。お待ちしております。(要予約)
What is Kappa?
Kappa is a Japanese ancient/unidentified creature that has been handed down from centuries back to the present. Because it’s unidentified it’s been represented in a various ways, but usually it has a green body with a plate on its head, shell like turtle’s, and peak. Japanese people have loved kappa because of its adorable appearance. It’s also been believed that kappa will bring families/couples happiness and blessed children. In some cases it’s deified as god of water.
Seisoku temple(Kappa temple) has the pot that a kappa gave to Osho, a priest for saving its life about 300 years ago. You can listen to the mysterious river current sounds when you put your ear to it. Please come and experience this mysterious sound by all means.
We’ll be waiting.
河童が置いていったこの甕は、全長の約36㎝、瓶底に「祖母懐」「加藤四郎左衛門」と記されていることから、室町、鎌倉時代の陶祖、加藤四郎左衛門景正(藤四郎)の古瀬戸祖母懐茶壷といわれています。祖母懐とは愛知県瀬戸市祖母懐町の地。「うばがふところ」または「うばのふところ」とも呼び、三方を丘陵に抱かれ正面が日向に当たっている地形ゆえにこの名があります。陶祖藤四郎が初めてこの地の陶土を発見し、瀬戸永住の意を決したと伝えられています。一般的な説では,曹洞宗の開祖道元禅師が貞応二年(1223)に宋へ渡った時,彼に従って宋へ行った加藤四郎左衛門景正が、帰国後の仁治三年(1242)に瀬戸の祖母懐に窯を開いたのが始まりといわれています。